• 竹槍

不文律は塵となって崩れ落ちた。

最終更新: 5月18日

学校的な勉強はできないけど頭のいい人というのは確かに居て、

そういう人たちの思考回路が長年密かに不思議だったのだが

最近ピンとくることがあった。

彼らはINPUTが楽しくないだけなのだろうなと。


というのが、仕事で美容院の経営者と雑談していて

「美容業は製造業より難しいよ!」

みたいに言われて


 huh???huh??huh?huh?huh???(partypallot風)


 彼らが逆立ちしても設計なんかできんと思うけどな?

 (DISってるわけじゃない、こっちだって彼らの業務は逆立ちしてもできないから)


となったので聞き入ってみたところ、なるほど確かにと思う部分もあったのだった。


例えば

美容院の日常業務のなかで

セット面の数に対してシャンプー台が半分程度しかなく、

シャンプー台の取り合いになって

スタッフ同士が険悪になることは珍しくないのだそうだ。


そんなん言ってもシャンプーせなあかんときにせなあかんのだったらしょうがないやん?


と思ったのだが

しょうがなかろうがシャンプー台は簡単に増やせないし、

そうしょっちゅうお客さんを待たせるわけにもいかない。

そこで他の美容師と被らないように「うまくやる」ことが求められてくる。


「うまくやる」とは、

自分のお客さんの施術もしつつ

他のスタッフが担当しているお客さんの会話を聞き漏らさないようにして

その会話やスタッフの動きなどから他のセット面の進行状態を推測して

今店内で施術しているお客さんのうち

同時にシャンプー台に行くことになりそうなのは何人か?を計算して

シャンプー台が満員でないときに自分のお客さんがシャンプーに入れるよう

極めて自然に業務の速さを調節する。

シャンプーしてる時も店内の他のセット面の様子に気を配り、

混んできそうだったら早く切り上げる。


特徴的なのは不文律を読み取る能力の高さで、

[竹槍]は学生時代にこのての能力が必要なバイトで相当苦渋をなめたことがある。

宴会場の設営や給仕をする派遣の仕事だったのだが、色々と余裕のない業種で、

バイトは教育もなしに現場に放り出されて指揮系統がもう滅茶苦茶だったのだ。


と書いてたら色々思い出してきた。

とても良い反面教師になった出来事だったので、本筋と関係ないけど備忘のために書く。


忙しく動いてる社員さんがすれ違いざまに

「次「料理出し」だから!」とだけ言って去っていく。

[竹槍]は「料理出し」がどこで何をすることなのか一切説明がないので混乱するのだが

社員さんを捕まえて無理やり「料理出しって何ですか」と聞こうものなら

ものっそい嫌な顔をされる。場合によったら怒鳴られる。

ところが同時期に入った女の子たちは、誰かに聞くこともなく

なぜか全然動じないでてきぱきと業務をこなしていたのだった。

おそらくは周りの先輩の動きから推測したりして

なんとなく言わんとすることをわかっていたか、

もしくはバイト同士の中での微妙なヒエラルキーを理解していて、

指示の内容がわからなくてもこの人の近くに居れば大丈夫!

みたいなことがわかっていたか、そんなところだとは思う。

けども一事が万事そんな感じでほとほと疲れ果てたし、

周りの子らはどうしてあんな指示で的確に動けるのだろうな?

どうして自分だけできないのだろうな?と劣等感を抱きもした。


んでまあ今でもこれは、第一に上が無能だったと信じて疑わないね。

教育をする時間の余裕も資金の余裕も作れない、

それならそれでド新人でも現場で動けるようなシステムを考えることもしない、

そんでそういうシステムを仮に戦略とすると

指示の出し方、みたいな戦術に当たる細かい部分についても考えないで、

指揮命令系統はないがしろにするは…


当時は今ほどバイト不足ではなくリーマンショックの真っただ中。

バイトなら数居るから全部そこにシワ寄せて使いつぶせ!って「戦略」だったのだろうな。

当然ながら、バイト、特に男の子は次々と辞めていった。

なんぼ興味のない業界でも自分ならもう少しマシな職場を作れると思うし、

今後人を使う立場になっていくに当たって本当に良い反面教師になった。


だがその暗澹とした状態に

今でもこのように文句を言って適応できてない[竹槍]は第二に無能で、

一番有能なのは

そんな中でも文句も言わずにてきぱき働いていた新人の女の子たちであり

冒頭でふれた美容師たちだ。


こういう子たちに「なんで今のでわかったの?」ときいても、

大抵は「なんとなく」とかぼんやりした返答しか返ってこないものである。

おそらく「なんで今のでわかった」のか、理論的な説明は可能なのだが

そう判断するに至った材料が細かすぎるのと多すぎるので、

理論的に説明するには相当に言葉を尽くさねばならないから

本人の中で明文化される理由としては「なんとなく」で処理されてしまう、

のだと勝手に思っている。


ところがそうなると、彼女らがやっているのは、

そんな容易に言語化できないほどの情報量に毎秒対面してそれを取捨選択して、

ひとつひとつの断片的な情報をパズルのピースのように組み立てて推論して

しかもその推論をほぼ当ててくる、しかも瞬時に、ってことなんよ。


どんだけ頭いいんだよ!?


勉強や開発だって

観察対象が日常的でないものだとか本の中だとかいうだけで方法は同じなのだ、

しかもそれらは容易に言語化できないほどの情報量でもなければ瞬時性も必要ない。

そのぶん不文律の読解よりも容易いと言えるから、

絶対にこの子たちやれば相当できるよな?


とせっかく思うのに、現実は違う。

例えばこういうタイプの女の子たちが稀にこちらのホーム、

ハード工学系の設計の世界に足を踏み入れてくると

末路は決まっていて、

いつまでも一人前になれずに

アシスタントとか配線・組付要員とか事務として落ち着くか

結婚出産実家の危機などなどを理由に居なくなるか

うつ病を発症するかの三択である。

女性の社会進出が叫ばれて何十年、下手すりゃ百年以上も経つのに、

彼女らが一人前の設計者としてバリバリ働いているところは

いまだに一人も見たことがない。


絶対頭良いはずなのになんでかな?


というのが冒頭の疑問で、

そりゃ「その分野に」興味があるかないかの違いだよ、

というのは誰でも良く言うけれども

だとしたらハード系工学についてこれないのはその理由で辻褄が合うとして、

学校の勉強までできないのはおかしい。

だって高校で習う内容ともなれば九科目もあり、

およそこの世の学問分野のさわりになる部分は大体カバーしてるぞ。

それに本当にひとつも興味がないというのはむしろ珍しいのではないか。

あと、じゃあ学校の勉強以外なら何に興味があるのか?といって

何か2-3上げてもらったとして、

色々話を聞くとその分野に対する造詣すらもあまりないことが多い。


だから、

「分野」に対する嗜好ではなく

頭の使い方に対する嗜好なのだろうな。


彼女らは今目の前で起こっていることに対処するためになら頭を使えるけれども、

目の前にありもしないことや対処の必要もないことに対しては頭を使えないのだろうな。

つまり最良のOUTPUTを模索するために頭を使うのが好きで

その訓練を無意識にも常にしてきたので、

あのような難解で多岐にわたる不文律を読めるのだろう。

ところがOUTPUTに直結しないことについて頭を使うのは嫌いなので、

INPUTは「今この場にある物事」だけになってしまうのであろう。

すぐには使わないINPUTの積み重ねを嫌うということだ。


これに対してOUTPUTの有無にかかわらずINPUT自体が楽しいというと

勉強が得意な子になるけれども、

時々目の前にありもしないものごとのINPUTが楽しいあまり

目の前にあるものごとのINPUTやすべてのOUTPUTをおざなりにしているので、

そのうち幾人かは不文律が読めなくなったりする弊害が起こるのであろう。


手をとりあってあゆみましょう。

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