• 竹槍

日用品だけに

更新日:8月3日


今日、使い終わった大量の現場用図面を処分したあと

図面を綴じていたクリップを持ちあぐねて、

作業着の袖にひとつひとついっぱい留めて運んだのだ。

その瞬間にふと、こんなワンシーンが漫画や映画に出てきたら、

きっと自分はその作品を好きになるだろうと思ったのだ。


例えば千年も二千年も前の世界を描いた時代物で

大量の書簡を処分したあとに残った[書簡を留めていた緒]を

持ちあぐねて一本一本帯に引っ掛けて運ぶシーンがあったらどうだろう。

作品世界の中の彼らの日常が委細な部分まで描かれることで

我らの日常と重ね合わせられる部分が見つかり、

より作品世界に没入していけるのではないだろうか。

また、その委細な部分までも描写できる

作者の没入度、知識の深さ、想像力などに感嘆したりもする。


始めは誰しも美しいことやドラマチックなことを描きたいと思って

作品作りを始めることだろう。

ところが、その美しくドラマに溢れたシーンを構成している要素の成り立ちを

ひとつひとつ遡ってゆくと、

それは必ずしも美しくもドラマチックでもない

生活感に溢れた些細な日常に裏打ちされているのだということがわかってくるはずだ。

それらは積極的に描きたいものではないはずだけれども、

それを描こうとする姿勢がもしあったら、

[竹槍]はそこに作品世界に対する誠意を見て、一発で惚れてしまうだろう。


「虚構の世界にニッチな使い方の日用品が登場する」というツボを自覚した。

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